ラカンティア
戦争バラード
サイレンの音がする。
戦いは、終盤に差し掛かっていた。
あまねく波のように、ブラストする兵器が、いたるところで、悲鳴を上げる、人間を飲み込んでいく、それは虐殺の歴史、繰り返す悲劇。
少女たちは、一気にけだものと化した男たちに犯され、敵味方入り乱れて、本能の争奪戦。
いつ見ても、人間は醜いとザクロは感じながら徹底的に、女たちを救っていった。
その数、500人の敵をその刃で屠り、解放していく、少女の苦しむ顔を見るに堪えないと思い、行使していった。
これは、新聖人のやることではない。
ザクロは、中央大広場に着く頃、返り血で、闘衣は深紫色に染まっていた。
不快な血の味、顔は夜叉のように紅潮し、しかし、今までの彼だったら決して助けなかっただろう。
切るごとに、マヒナルの顔が思い浮かんだ。
少女の顔から涙が流れるごとに、怒りが、禁じ得ない凄まじい怒りがこみ上げ、もう抑制はつかなかった。
ザクロは、力を解放した。
完全開放。
パープルライオット。
かつて彼を恐れない戦場はなかった。
ゆっくりと歩を刻み、確かめるように、やられている女はいないか確認し、確実に駆逐する、そう愚かな人間を!
切る、切る、切る!
ぶった切って、軽く1000人の敵を消し、中央大広場に行くのは相当遅れた。
「マヒナル……」
マヒナルは人間だった。
彼女に出会ったあの空の下を想い出す。
夕日の森で、あれは第七世界の黄昏。
恒星青月レッシラスの使者かと思われるほどの美貌、陰りのある横顔。太陽のような瞳。テンプテーションをつかわず落とした。
5回目のデートで、口説き落とし、彼女が人間であることを知ったのは、セックスをした後だった。
処女だった。
別にだからどうしたというわけではないが、心から嬉しかったのを想いだす。
彼女の温かい涙は、凍り付いていたザクロの救いそのものだった。
手が離れる、その時、彼女の指先の感触が、今こうやって剣を握ることを肯定してくれているかのようだった。
「死ね、野蛮な猿ども、一匹のこらず、殺してやる」
首を飛ばすだけでは、おさまらない。
完全開放とは、一度決めたことを遂行するまで、やめないという神との一時の契約のようのものだ。
契約をすると、力が常態の一億倍に膨れ上がる、しかし、契約を破棄すれば命を奪われる。
命を懸ける真の聖戦士の究極のやり方だ。
「一匹も逃さない」
ザクロの体から紫焔が上がる。
敵の場所をすべて把握する予知眼。
雷刀が炸裂し、見るものすべてを圧倒的な力で消滅させていく。
街は、パープルライオットの怒りに触れ、発狂した。
いたるところで、狂人となった男どもの絶叫がする。
精神感応イレギュレーション
別名「狂雷爆殺」
新聖人の怒りに触れた人間の末路だ。
やがて夜がけた。
女子供の死骸。
おびただしい数にのぼる。
生き残った男は独りもいない。
敵味方とわず。
それが、現実だ。
血と硝煙の風に乗って、もっと不気味な波動が揺れ動くように、もぞりとザクロの神経を刺激した。
「マンティコア」
ザクロは呼んだ。
破壊された戦車の影に、ザクロは走り、マンティコアが、空を飛ぶと、電撃を放った。
「ひはは、やったな、ザクロ。これでお前は、完全な犯罪者だ」
マンティコアが褐色の裸体で、挑発する。
ザクロは吐き捨てるように、
「黙れ、鬼畜が」
「ここまで人間をやれば、お前は狙われる。明日からは、ロッパルド警察機構が貴様を捕まえるために動くぞ。悪魔め! 逃げ場はないぞ」
「ああ、それはこっちのセリフだよ。ここでマヒナルの敵を討ってやる」
「やーだー、もう、だめよ。あなたは私のものだからね。ザクロ。そんなに怖い顔をしないでよ」
マヒナル。
形は、確かにマヒナルだ。
一瞬、躊躇した。
マンティコアのテンプテーションだと気が付いた時には遅かった。
「この、糞女が!」
しかし、気が付けば、心臓を貫かれていた。
マヒナル、否、マンティコアの中指が伸びて、心臓を貫くと、そのまま指は地面に刺さり、くし刺しになった、体が痺れる、吐血する。
「ば~か、お前は私と同類なんだよ。自覚したか、私に許しを乞え、そして、また私のもとに帰るんだよ。人間の女にうつつを抜かすなんて、あんたは本当にばか、ぐう!」
ザクロは狂雷を放った。貫いた指をしっかりと握って。死を覚悟した新聖人を甘く見たらしい。
マンティコアの肉体が一瞬で黒焦げになる。
「ああ、ああああ! この野郎。私の体をおおおお!」
「死ね」
「あははははは! なめんなよ。またレイプしてやるからな」
構わずザクロは、狂雷をフルボルトで放ち、命の燐光が灯るまでやった。
マンティコアの暴れる姿を目に焼き付けた。
死ね、死ね、死ね!
この野郎!
死ね!
放せ!
マヒナル、もうすぐ終わるよ。お前のもとに行くからね。
血の涙が頬を伝う。
しかし、敵討ちは失敗に終わった。
空の彼方から、船がやってきた。
すぐにロッパルド警察だと気が付く。
ザクロは冷静さを残しながら戦う。
やれない、ならここは引く。
神との契約は、虐殺をする人間殲滅。マンティコアは、間違いなく新聖人だ。カウントされない場合もある。神に近いものと対峙するほどに、契約は複雑になる。
ザクロは殺せないと解ると、指を切った。
心臓に刺さった攻撃は、すれすれで、逸れていた。
吐血して、また歯を食いしばり、力を振り絞り、その場を逃げた。
背後でマンティコアが哄笑している。
「お前は私のものだ! ザクロ」
ちらっと確認する。
もう、もとの忌々しいマンティコアにもどっている。
ザクロは街を脱して山に入り、夜景を眺めるように、残骸となった街を見下ろした。
人間の魂が、まるで蛍のように空に昇っていく。
樹に寄り掛かり、胸を見る。
たいしたことない。
それよりも、音楽が聴きたくなる。
戦争バラードではなく、マヒナルの一番好きだったポップソング。
「マヒナル、ごめん」
とザクロは言って、森の奥に消えていった。
戦いは、終盤に差し掛かっていた。
あまねく波のように、ブラストする兵器が、いたるところで、悲鳴を上げる、人間を飲み込んでいく、それは虐殺の歴史、繰り返す悲劇。
少女たちは、一気にけだものと化した男たちに犯され、敵味方入り乱れて、本能の争奪戦。
いつ見ても、人間は醜いとザクロは感じながら徹底的に、女たちを救っていった。
その数、500人の敵をその刃で屠り、解放していく、少女の苦しむ顔を見るに堪えないと思い、行使していった。
これは、新聖人のやることではない。
ザクロは、中央大広場に着く頃、返り血で、闘衣は深紫色に染まっていた。
不快な血の味、顔は夜叉のように紅潮し、しかし、今までの彼だったら決して助けなかっただろう。
切るごとに、マヒナルの顔が思い浮かんだ。
少女の顔から涙が流れるごとに、怒りが、禁じ得ない凄まじい怒りがこみ上げ、もう抑制はつかなかった。
ザクロは、力を解放した。
完全開放。
パープルライオット。
かつて彼を恐れない戦場はなかった。
ゆっくりと歩を刻み、確かめるように、やられている女はいないか確認し、確実に駆逐する、そう愚かな人間を!
切る、切る、切る!
ぶった切って、軽く1000人の敵を消し、中央大広場に行くのは相当遅れた。
「マヒナル……」
マヒナルは人間だった。
彼女に出会ったあの空の下を想い出す。
夕日の森で、あれは第七世界の黄昏。
恒星青月レッシラスの使者かと思われるほどの美貌、陰りのある横顔。太陽のような瞳。テンプテーションをつかわず落とした。
5回目のデートで、口説き落とし、彼女が人間であることを知ったのは、セックスをした後だった。
処女だった。
別にだからどうしたというわけではないが、心から嬉しかったのを想いだす。
彼女の温かい涙は、凍り付いていたザクロの救いそのものだった。
手が離れる、その時、彼女の指先の感触が、今こうやって剣を握ることを肯定してくれているかのようだった。
「死ね、野蛮な猿ども、一匹のこらず、殺してやる」
首を飛ばすだけでは、おさまらない。
完全開放とは、一度決めたことを遂行するまで、やめないという神との一時の契約のようのものだ。
契約をすると、力が常態の一億倍に膨れ上がる、しかし、契約を破棄すれば命を奪われる。
命を懸ける真の聖戦士の究極のやり方だ。
「一匹も逃さない」
ザクロの体から紫焔が上がる。
敵の場所をすべて把握する予知眼。
雷刀が炸裂し、見るものすべてを圧倒的な力で消滅させていく。
街は、パープルライオットの怒りに触れ、発狂した。
いたるところで、狂人となった男どもの絶叫がする。
精神感応イレギュレーション
別名「狂雷爆殺」
新聖人の怒りに触れた人間の末路だ。
やがて夜がけた。
女子供の死骸。
おびただしい数にのぼる。
生き残った男は独りもいない。
敵味方とわず。
それが、現実だ。
血と硝煙の風に乗って、もっと不気味な波動が揺れ動くように、もぞりとザクロの神経を刺激した。
「マンティコア」
ザクロは呼んだ。
破壊された戦車の影に、ザクロは走り、マンティコアが、空を飛ぶと、電撃を放った。
「ひはは、やったな、ザクロ。これでお前は、完全な犯罪者だ」
マンティコアが褐色の裸体で、挑発する。
ザクロは吐き捨てるように、
「黙れ、鬼畜が」
「ここまで人間をやれば、お前は狙われる。明日からは、ロッパルド警察機構が貴様を捕まえるために動くぞ。悪魔め! 逃げ場はないぞ」
「ああ、それはこっちのセリフだよ。ここでマヒナルの敵を討ってやる」
「やーだー、もう、だめよ。あなたは私のものだからね。ザクロ。そんなに怖い顔をしないでよ」
マヒナル。
形は、確かにマヒナルだ。
一瞬、躊躇した。
マンティコアのテンプテーションだと気が付いた時には遅かった。
「この、糞女が!」
しかし、気が付けば、心臓を貫かれていた。
マヒナル、否、マンティコアの中指が伸びて、心臓を貫くと、そのまま指は地面に刺さり、くし刺しになった、体が痺れる、吐血する。
「ば~か、お前は私と同類なんだよ。自覚したか、私に許しを乞え、そして、また私のもとに帰るんだよ。人間の女にうつつを抜かすなんて、あんたは本当にばか、ぐう!」
ザクロは狂雷を放った。貫いた指をしっかりと握って。死を覚悟した新聖人を甘く見たらしい。
マンティコアの肉体が一瞬で黒焦げになる。
「ああ、ああああ! この野郎。私の体をおおおお!」
「死ね」
「あははははは! なめんなよ。またレイプしてやるからな」
構わずザクロは、狂雷をフルボルトで放ち、命の燐光が灯るまでやった。
マンティコアの暴れる姿を目に焼き付けた。
死ね、死ね、死ね!
この野郎!
死ね!
放せ!
マヒナル、もうすぐ終わるよ。お前のもとに行くからね。
血の涙が頬を伝う。
しかし、敵討ちは失敗に終わった。
空の彼方から、船がやってきた。
すぐにロッパルド警察だと気が付く。
ザクロは冷静さを残しながら戦う。
やれない、ならここは引く。
神との契約は、虐殺をする人間殲滅。マンティコアは、間違いなく新聖人だ。カウントされない場合もある。神に近いものと対峙するほどに、契約は複雑になる。
ザクロは殺せないと解ると、指を切った。
心臓に刺さった攻撃は、すれすれで、逸れていた。
吐血して、また歯を食いしばり、力を振り絞り、その場を逃げた。
背後でマンティコアが哄笑している。
「お前は私のものだ! ザクロ」
ちらっと確認する。
もう、もとの忌々しいマンティコアにもどっている。
ザクロは街を脱して山に入り、夜景を眺めるように、残骸となった街を見下ろした。
人間の魂が、まるで蛍のように空に昇っていく。
樹に寄り掛かり、胸を見る。
たいしたことない。
それよりも、音楽が聴きたくなる。
戦争バラードではなく、マヒナルの一番好きだったポップソング。
「マヒナル、ごめん」
とザクロは言って、森の奥に消えていった。