恋人は謎の冒険者

プロローグ

「おじさん、もう一杯ちょーだい」

ドンと空になったコップをカウンターに置いて、マリベルはバーテンダーで居酒屋の店主のボルスに言った。

「おいおい、かなりのピッチだが大丈夫か? 止めておいた方が・・」
「わたしにお酒が売れないって言うの?」

心配して止めようとするのを、ギロリと睨んでからむ。すでに目が座っていて完全に質の悪い酔っ払い予備軍である。
それでもマリベルはまだ足りないと思っていた。

「はいはい、だがこれで最後にしろよ」

お酒は都度払いのため、エールを出した交換でマリベルが出した銅貨を引き上げる。
並々と注がれたエールの表面をじっと見つめてから、マリベルはそれを一気に半分飲んだ。

(ちっとも美味しくない)

少々飲めるがお酒はあまり得意じゃないマリベルは、口に広がる苦みに顔を歪めた。
普段ほととんどお酒を飲むことはなく、もちろん酔っ払ったこともない。
しかしその日はどうしても飲まずにはいらなかった。
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