恋人は謎の冒険者
「さあ、皆さん、今日も一日よろしくお願いしますね」
「「「「よろしくお願いします」」」」
ミチルダさんの点呼の後、仕事が始まった。
「あら、噂をすればね」
キャシーが耳打ちしてきて、顔を上げると満面の笑みを浮かべながらプリシラが入ってきた。
「やあプリシラ、今度また店に行くよ」
「サービスしてくれよ」
ギルドに来ていた男性冒険者たちがプリシラに声をかける。
彼女が振り向くと豊かな胸がプルプルと震える。腰がキュッと締まってお尻もむっちりとしていて、出るところは出て、という感じだ。
彼女に比べればマリベルの胸などまだまだ発展途上だ。
「おはようマリベル」
「プリシラ、どうしたの?」
彼女は真っ直ぐにマリベルに向かって歩いてきて、受付のカウンターに大きな胸を乗せた。
隣にいる男性冒険者の視線が、そこに釘付けになる。
「あなたに報告しておくべきかと思って。わたし、エミリオと婚約したの」
勝ち誇ったようにドヤ顔でプリシラが言った。
「……おめでとう」
プリシラは自分とエミリオの関係を知っていて、わざわざそのことを報告に来たのだ。
「その言葉はあなたの本当の気持ちと思っていいかしら?」
「どういう意味?」
「わたし、知っているのよ。エミリオがわたしに相談してくれたの。マリベルが受付の特権を利用して、エミリオに楽な依頼を回すから、自分と付き合えって迫ってきて困ってるって」
わざとらしく少し声量を上げて周りに聞こえるようにプリシラは言った。
「A級になったのは自分のお陰だから、感謝しろ、格下げになりたくなかったら、言うことを聞けって脅迫もしてきたって」
「そ、そんなの嘘よ」
「でも、エミリオに依頼を回してくれたのは事実でしょ?」
「…そ、それは、彼が…」
それは事実なので否定は出来ない。言葉を濁したマリベルに、更にプリシラが言い放った。
「エミリオは公平にしてくれ、俺は嫌だと言ったのに、わたしの父親はギルド長なんだから、言うことをきかないと不利になるのはエミリオだって言ったらしいわね」
「そんなことわたしは・・」
「本当なの?」
「まさか、本当なら職権乱用もいいところだ」
否定するマリベルの声は、ざわざわと二人の会話を耳にした人たちの囁きにかき消されていく。
「マリベル、大丈夫?」
「キャシー」
「プリシラ、その話は本当なの」
ミランダさんが担当していた冒険者に断りを入れて、こちらにやって来た。
「ミランダさん、わたしは、そんなこと言っていません。父の力を使って何かを強制したりしたことはありません」
事実無根だと訴えると、ミランダさんはそうねぇ、あなたはそんなことしないと思うけどと、一応は信じてくれたようだが、完全にはそう思っていないことがわかった。
「嘘つきね、そんなの今まで隠していただけで、裏ではそうだったって言っているのよ。エミリオも怖くて言えなかっただけよ、ねえエミリオ」
プリシラが振り返ると、入口にエミリオが立った。
「俺がA級以上にならないと父親が納得しない。手助けしてやるからって、レベル上げは俺にも願ったりだから頑張ったけど、ごめん。俺はプリシラが好きなんだ。諦めてくれ。黙っていようと思ったが、それをネタに迫られたら俺も困る」
「そんな…迫ったことなんて…あなたが先に…」
「妄想はやめてよ。わたしとエミリオはもう二年前から付き合っているのよ」
「二年前…」
計算が合わない。エミリオがマリベルに告白したのが一年前、ということは、最初から二股だったのだ。
「「「「よろしくお願いします」」」」
ミチルダさんの点呼の後、仕事が始まった。
「あら、噂をすればね」
キャシーが耳打ちしてきて、顔を上げると満面の笑みを浮かべながらプリシラが入ってきた。
「やあプリシラ、今度また店に行くよ」
「サービスしてくれよ」
ギルドに来ていた男性冒険者たちがプリシラに声をかける。
彼女が振り向くと豊かな胸がプルプルと震える。腰がキュッと締まってお尻もむっちりとしていて、出るところは出て、という感じだ。
彼女に比べればマリベルの胸などまだまだ発展途上だ。
「おはようマリベル」
「プリシラ、どうしたの?」
彼女は真っ直ぐにマリベルに向かって歩いてきて、受付のカウンターに大きな胸を乗せた。
隣にいる男性冒険者の視線が、そこに釘付けになる。
「あなたに報告しておくべきかと思って。わたし、エミリオと婚約したの」
勝ち誇ったようにドヤ顔でプリシラが言った。
「……おめでとう」
プリシラは自分とエミリオの関係を知っていて、わざわざそのことを報告に来たのだ。
「その言葉はあなたの本当の気持ちと思っていいかしら?」
「どういう意味?」
「わたし、知っているのよ。エミリオがわたしに相談してくれたの。マリベルが受付の特権を利用して、エミリオに楽な依頼を回すから、自分と付き合えって迫ってきて困ってるって」
わざとらしく少し声量を上げて周りに聞こえるようにプリシラは言った。
「A級になったのは自分のお陰だから、感謝しろ、格下げになりたくなかったら、言うことを聞けって脅迫もしてきたって」
「そ、そんなの嘘よ」
「でも、エミリオに依頼を回してくれたのは事実でしょ?」
「…そ、それは、彼が…」
それは事実なので否定は出来ない。言葉を濁したマリベルに、更にプリシラが言い放った。
「エミリオは公平にしてくれ、俺は嫌だと言ったのに、わたしの父親はギルド長なんだから、言うことをきかないと不利になるのはエミリオだって言ったらしいわね」
「そんなことわたしは・・」
「本当なの?」
「まさか、本当なら職権乱用もいいところだ」
否定するマリベルの声は、ざわざわと二人の会話を耳にした人たちの囁きにかき消されていく。
「マリベル、大丈夫?」
「キャシー」
「プリシラ、その話は本当なの」
ミランダさんが担当していた冒険者に断りを入れて、こちらにやって来た。
「ミランダさん、わたしは、そんなこと言っていません。父の力を使って何かを強制したりしたことはありません」
事実無根だと訴えると、ミランダさんはそうねぇ、あなたはそんなことしないと思うけどと、一応は信じてくれたようだが、完全にはそう思っていないことがわかった。
「嘘つきね、そんなの今まで隠していただけで、裏ではそうだったって言っているのよ。エミリオも怖くて言えなかっただけよ、ねえエミリオ」
プリシラが振り返ると、入口にエミリオが立った。
「俺がA級以上にならないと父親が納得しない。手助けしてやるからって、レベル上げは俺にも願ったりだから頑張ったけど、ごめん。俺はプリシラが好きなんだ。諦めてくれ。黙っていようと思ったが、それをネタに迫られたら俺も困る」
「そんな…迫ったことなんて…あなたが先に…」
「妄想はやめてよ。わたしとエミリオはもう二年前から付き合っているのよ」
「二年前…」
計算が合わない。エミリオがマリベルに告白したのが一年前、ということは、最初から二股だったのだ。