恋人は謎の冒険者
「あ!」

その薬草がどれほど貴重かわかっている者は全員それを見て驚きの声を上げた。

「エミリオ、てめぇ、それがどれ程貴重な薬草かわかってやってるのか!」
「な、なんだよ、たかが薬草だろ」

いきなり自分に罵声が浴びせられ、握りつぶした薬草を振りかざしてエミリオは反論する。

「おまえ、それでも冒険者の端くれか!」
「本気で言ってるなら、お前は冒険者失格だ」
「そこにある薬草の束ひとつあれば、俺たちは半年食い繋げることができるんだぞ」

周りからエミリオに向けて激しい罵りの声が飛び交った。
エミリオはこれまで薬草採取の依頼は地味で性に合わないと言ってやってこなかった。
図鑑などでコツコツ確認して、ひとつひとつ覚えるのが苦手なことと、実は一度過去に間違えて毒草を採取してしまったことがあるからだった。
マリベルが、エミリオにライセンスに汚点が付くと泣きつかれ、何とか揉み消してあげた。

「な…た、たかがC級野郎が持ってきた薬草くらい、お、俺だって採って来られる」

エミリオはその剣幕にすっかり怖気づき、弱々しく言った。

「ちょ、ちょっとエミリオ、何弱気になっているのよ。しっかりしてよ」
「う、うるさい、お前は黙ってろよ」

そんなエミリオにプリシラが横からハッパをかける。

「返せ」

二人が言い合いをしているところへ、フェルが低い声でそう言って彼の手から薬草の束を取り戻した。
一瞬、彼が何をしたのかわからないくらい、その動きは素早かった。

「え!」

そして潰れた薬草の束に手を翳すと、それはまた採取したてのように復活した。

「おお!戻った。今の魔法詠唱したのは聞こえなかったぞ」

周りから驚きの声が聞こえ、フェルに一気に注目が集まる。

「どうぞ」

生き返った薬草をフェルは再びマリベルに差し出した。

「あ、じゃあ、査定しますね」
「違う」
「え?」

差し出された薬草を査定して換金しようとしたマリベルに、フェルが口を挟んだ。

「それはあなたにあげるために、採ってきた」
「え? どういう…」
「プレゼント。俺からあなたに」

またもや少し赤らめた顔をして彼は言った。

「プ、プレゼント? わたしに?」

マリベルは驚いて彼の顔と薬草の束を見比べる。

「やだ、もしかして…それ、花束のつもり?」

プリシラが可笑しそうに言った。

「え?」

確かに薬草にはどれも花が咲いている。
白や黄色、紫の花が付いた薬草の束を見て、それからフェルの顔を見上げた。
彼の顔は相変わらず赤らんでいる。

「それがあればどんな病気に掛かっても治る。俺は君に健康でいてもらいたい」

真正面からそう言い、それからプリシラとエミリオを睨みつける。

「失せろ。お前たちは彼女を病気にする」
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