恋人は謎の冒険者
「お前、俺がA級冒険者のエミリオ=トーチスだと知ってるんだろうな、その俺に向かって『邪魔』とか吐《ぬ》かしやがってただで済むと思うなよ」

「A級」を二度も強調して叫ぶエミリオに、マリベルは何でこんな人のことをいいと思ったんだろうと思った。
確かに男前だけど、自慢ばかりして他人のことを悪し様に言ってばかりだし、自分より優れている人を妬み、自分より劣っていると思う相手にはどこまでもぞんざいで威圧的だった。

「俺はお前のことを知らない。ただ、邪魔だから邪魔だと言った」

エミリオの怒声に対し、フェルは無表情でそう切り返す。

「て、てめぇ」

火に油を注ぐ態度にエミリオの怒りは更に募った。

「エミリオ、彼はフェル=カラレスよ」

プリシラはフェルのことを知っているのか、エミリオに名前を教える。

「思い出した、お前、時々ここにくる確かC級の冒険者のカラレスだったな。C級がA級の俺を邪魔者扱いするとはいい度胸じゃないか。覚悟は出来ているんだろうな」
「これ」

横から話しかけるエミリオを無視して、フェルはマリベルの座るカウンターの上に、バサリと植物の束を取り出した。

「え?」

フェルがカウンターに置いたのは植物の束だった。

「え、これって、ルポボ草?」
「アクリスタもあるわ」

マリベルに続いてキャシーやミランダさんもその束を見て目を丸くした。
軽く七種類ほどあるその束は、どれも今の時期収穫するのが難しかったり、採取が困難な薬草類だった。
一株がかなりの高額になる希少な薬草をまるで花束のようにして持ってきた。
ご丁寧に根まで付いている。
薬草採取の依頼は期限や時期に関係なく、常に発注されている。採取してくる薬草によって報酬は変わるが、他の依頼の途中に見つけてきたりしても、先に依頼受注の申請がなくても対応してもらえる。

「これはどうしたんですか?」

仰ぎ見てフェルに問いかけると、彼はふいっと頬を赤らめた。

「マリベルさんに、差し上げます。ほしければもっと採ってきますよ」
「え、な、なぜ?」
「おい、C級野郎、いきなり横から割り込んできて、何様だ!」

話の腰を折られて邪険にされたことに腹を立てたエミリオが、貴重な薬草を集めた束を、見るも無惨に握りつぶした。
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