恋人は謎の冒険者
取り敢えずマリベルたち回復術士が出来ることは全てやった。
気になってマリベルがギルドへと向かうと、案の定ギルドの方もウルフキングの出現に大騒ぎだった。
「今すぐラセルダ中のB級以上の冒険者を集めろ!C級でも実力のある者なら構わないぞ。急ぎでない依頼は一旦停止しろ」
ギルド長が陣頭指揮を執り、一階は上を下への大騒ぎになっていた。
「マリベル、医務室へ来た人たちは大丈夫だった?」
キャシーがマリベルが来たのを見て訊ねた。
「うん、命に別状はないわ。でも私たちの力では足りなくて、エクストラヒールが使える人がいたら・・」
「エクストラヒールって、王室直轄の魔導騎士団にしかいないじゃない」
「うん、だからあれ以上はもう」
自分の力が及ばないことが悔しくて、マリベルは唇を噛みしめる。
その時、入り口の辺りからざわめきが起こった。
人でごった返し慌ただしいギルドの一階の広場。その先、入り口に見えたのは頭一つ人より飛び抜けたアッシュブロンドの頭だった。
「おい、まさか…」
人混みの向こう、マリベルたちのいる受付の辺りから見えたのは頭のてっぺんだけ。だけどそれが誰なのかマリベルにはわかった。
「フェルさん」
でも、マリベルとフェルの間にいる人たちが驚いたのは、彼に対してではなかった。
アッシュブロンドの頭が動き、こちらへと歩いてくる。すると自然と人々が動いて、彼のために通路を開けていく。
フェルは誰かを背負い、しっかりとした足取りでマリベルに向かって歩いてきた。
「フェルさん。その人は?」
「魔物に魘われていたから、助けました」
彼の背中にいる人物が「ううん…」と呻き声を上げて、顔を上げた。
「バーツ! お前、バーツじゃないか。無事だったのか」
先程マリベルが治療した冒険者のガービーが医務室から出てきたところだった。
「え、シーカーの?」
「そうだ、ああ、良かった。あんたがバーツを助けてくれたのか?」
それに対し彼は無言で頷いた。
「とにかく話はあとだ、誰か彼を医務室へ運んでくれ」
ギルド長の命令でギルドの職員たちが走ってきて、フェルの背中からバーツを引き取り医務室へと連れて行った。ガービーもそれについていく。
「一体どうやって、彼を? 君はどこか怪我は?」
ギルド長がそう尋ねるとよく見れば衣服のあちこちに血が付いていた。
「フェルさん、大丈夫ですか?」
先に質問したのはギルド長なのに、フェルはマリベルの方を向いて大丈夫だと答えた。
「これはさっきの人の血と、ベアドウルフの血だ。俺はかすり傷ひとつない」
そう言った後、一瞬にして彼の衣服にこびり着いた血の痕がキレイサッパリ消え去った。
それはいわゆる洗浄魔法。風魔法と水魔法の併せ技だった。
「君が大丈夫なのはわかった。君はウルフキングを見たのか? 彼らはベアドウルフ討伐に行って、ウルフキングを見たと言っているが」
ギルド長がそう聞いてきた。
依頼に失敗した冒険者が、依頼を達成出来なかったことを正当化するため、時に大げさに何があったか吹聴する時がある。
ウルフキングはS級クラスの討伐対象だから、B級の冒険者には手に余る相手だ。
ギルド長は彼らの証言についての裏付けをフェルに求めた。
気になってマリベルがギルドへと向かうと、案の定ギルドの方もウルフキングの出現に大騒ぎだった。
「今すぐラセルダ中のB級以上の冒険者を集めろ!C級でも実力のある者なら構わないぞ。急ぎでない依頼は一旦停止しろ」
ギルド長が陣頭指揮を執り、一階は上を下への大騒ぎになっていた。
「マリベル、医務室へ来た人たちは大丈夫だった?」
キャシーがマリベルが来たのを見て訊ねた。
「うん、命に別状はないわ。でも私たちの力では足りなくて、エクストラヒールが使える人がいたら・・」
「エクストラヒールって、王室直轄の魔導騎士団にしかいないじゃない」
「うん、だからあれ以上はもう」
自分の力が及ばないことが悔しくて、マリベルは唇を噛みしめる。
その時、入り口の辺りからざわめきが起こった。
人でごった返し慌ただしいギルドの一階の広場。その先、入り口に見えたのは頭一つ人より飛び抜けたアッシュブロンドの頭だった。
「おい、まさか…」
人混みの向こう、マリベルたちのいる受付の辺りから見えたのは頭のてっぺんだけ。だけどそれが誰なのかマリベルにはわかった。
「フェルさん」
でも、マリベルとフェルの間にいる人たちが驚いたのは、彼に対してではなかった。
アッシュブロンドの頭が動き、こちらへと歩いてくる。すると自然と人々が動いて、彼のために通路を開けていく。
フェルは誰かを背負い、しっかりとした足取りでマリベルに向かって歩いてきた。
「フェルさん。その人は?」
「魔物に魘われていたから、助けました」
彼の背中にいる人物が「ううん…」と呻き声を上げて、顔を上げた。
「バーツ! お前、バーツじゃないか。無事だったのか」
先程マリベルが治療した冒険者のガービーが医務室から出てきたところだった。
「え、シーカーの?」
「そうだ、ああ、良かった。あんたがバーツを助けてくれたのか?」
それに対し彼は無言で頷いた。
「とにかく話はあとだ、誰か彼を医務室へ運んでくれ」
ギルド長の命令でギルドの職員たちが走ってきて、フェルの背中からバーツを引き取り医務室へと連れて行った。ガービーもそれについていく。
「一体どうやって、彼を? 君はどこか怪我は?」
ギルド長がそう尋ねるとよく見れば衣服のあちこちに血が付いていた。
「フェルさん、大丈夫ですか?」
先に質問したのはギルド長なのに、フェルはマリベルの方を向いて大丈夫だと答えた。
「これはさっきの人の血と、ベアドウルフの血だ。俺はかすり傷ひとつない」
そう言った後、一瞬にして彼の衣服にこびり着いた血の痕がキレイサッパリ消え去った。
それはいわゆる洗浄魔法。風魔法と水魔法の併せ技だった。
「君が大丈夫なのはわかった。君はウルフキングを見たのか? 彼らはベアドウルフ討伐に行って、ウルフキングを見たと言っているが」
ギルド長がそう聞いてきた。
依頼に失敗した冒険者が、依頼を達成出来なかったことを正当化するため、時に大げさに何があったか吹聴する時がある。
ウルフキングはS級クラスの討伐対象だから、B級の冒険者には手に余る相手だ。
ギルド長は彼らの証言についての裏付けをフェルに求めた。