バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
ある日、珍しく航が京都から遊びに来た友人を家に呼んだ。

航の大学時代の同級生で、犬飼という磊落な男性と麗華という美しい女性だった。

すみれは白いエプロンを付けてオードブルとビーフシチューを作り、ふたりをもてなした。

犬飼は黒縁眼鏡の奥の目を丸くしながら、すみれを航の妻だと勘違いして叫んだ。

「航。聞いてないぞ!こんなに若い嫁さんがいたなんてさ。いつ結婚したんだよ!」

その言葉に顔を綻ばせるすみれをよそに、航はばつの悪そうな顔で訂正した。

「誤解するなよ。すみれは俺の姪っ子だ。」

「そうかあ。でもお前が結婚しない理由がわかったような気がするな。こんな可愛い子がそばにいたんじゃな。」

そう言うと犬飼は下卑た顔ですみれを見た。

「そうね。」

麗華は赤いルージュの唇を引き上げ、意味深な笑みを浮かべた。

麗華はショートカットのボーイッシュな美人だった。

その口調もハキハキと快活で気持ち良く、女のすみれから見ても素敵な女性だった。

2人は航と同じ大学の教育学部で、犬飼は高校の古典の教師、麗華は中学の英語教師をしているとのことだった。

航と犬飼はビール、すみれと麗華は赤ワインを飲んだ。

ハタチを過ぎてすみれは、友達との食事の席でお酒を少しずつたしなむようになっていた。

しかし航はすみれがお酒を飲むことにあまりいい顔をしなかった。

すみれは航に、酒席では絶対に隙を見せるなと、何度も注意されていた。

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