臆病な私の愛し方
 …テイキさんが抱き締めてくれたら、こんな感じなのかな…
 私はキスをしたことが今まで一度もないけれど、こんなふうにテイキさんに優しく抱き締められてしてもらったら、どれだけ幸せなんだろう…?

 私はしばらく夢うつつのまま現状に身を任せていた。


 そして気付き、ふと目を開ける。
 すると至近距離で合う、テイキさんとの視線。

 …夢の通り…テイキさんが私を抱き締めてくれてる…
 
 しかし私は気付く。
 なぜテイキさんが私を抱き締めてくれているのか。
 寝ている間に、私がテイキさんに寄っかかったり自分が椅子から落ちたりして、迷惑をかけたに違いない。

 私が誘った映画なのに…

「…ごめんなさい…テイキさんに寄っかかっちゃいました…?それに、寝顔まで…私、途中で眠ってしまって…。テイキさん、お疲れだと思ったからリラックスしてもらおうと思って誘ったのに…」

 私はぼんやりのまま必死に言葉を紡ぐ。

 テイキさんは始終少し驚いた表情をしていたけれど、

「…そうだったのか。…椅子から落ちそうだった、体が痛くなければいい」

 そう返してくれた。

 …やっぱり、私を直そうとしてくれてたんだ…

 私は寝姿を見られ椅子から落ちそうになっていた恥ずかしさはあっても、抱きしめて直してくれようとしたテイキさんの優しさに笑みがこぼれる。

 映画はもう終盤らしい。

「ありがとうございます…!もう映画、終わっちゃいますね…。私、重かったでしょう…?ごめんなさい…」

 私の謝罪に、テイキさんはフッと笑う。

「…別にいい」
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