臆病な私の愛し方

家に連れられて

 何て酷いことを言うんだろう…
 きっと、テイキさんにはテイキさんの事情があるからなのに…

 私はなんと言ったらいいのか途方に暮れる。

 と、突然テイキさんは私の手を強く引き歩き出した。

「テイキさん…あの、どこに…」

 私の問い掛けにも怒りの様子のままテイキさんは返す。

「黙ってろ」

 しばらく歩き着いた場所は、いつかタクシーからテイキさんが降りていったマンション。

 …私を、ここに…?


「…テイキさん…私…」

 私は何だか感じる嫌な予感にそう口を開くけれど、すぐに遮られる。

「帰れると思うな。お前がさっき何をしたか、教えてやるよ…」

 テイキさんは脅すような怖い声でそう言うと、家のドアを開けて入りすぐさま鍵を掛けた。

「…バカだな、ナツ…アイツがただの知り合いだからって、安心してたのか…?」

 テイキさんが、初めて私にする怒りの声。
 その声もなぜか笑いを含み、それによって怖さが増したように感じた。

 テイキさんはさらに私を壁に追い詰め、ギラついた目付きで睨みつける。

「!!」

「…そうか、アイツに期待してたのか…。こうやってどこかに連れ込まれて、こうやって壁に押し付けられて…自分はアイツの好きにされたかった、ってな…!!」
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