初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
二人で手を握りしめ合いながら、視線を重ねる。観念したかのように、イグナーツが目を伏せた。
「口づけを……してもいいだろうか……」
躊躇うような口調であった。
オネルヴァもぱちぱちと目を瞬く。
「口づけ、ですか?」
夫婦となった二人であるが、夫婦のような触れ合いはない。触れ合いそのものがないのだ。
手を繋ぐのも、エルシーを挟んでしかしたことがない。直接二人で触れ合ったことはない。二人の間には必ずエルシーがいた。
「す、すまない……」
掠れるような声で、イグナーツが言葉にする。
「いえ。わたくしたちは夫婦ですから。その……口づけをしてもいい間柄と言いますか、なんと言いますか。ですが、突然そのようなことを言われたら、驚くと言いますか……」
オネルヴァは混乱していた。なぜ、急にイグナーツが口づけをしたいと言い出したのかがまったくわからない。
オネルヴァに求められているのはエルシーの母親であって、彼の妻ではない。家族と口にしながらも、その家族もエルシーが中心に成り立っているものと思っていた。
「人工呼吸のようなものだと……人助けだと、思ってくれたらいい……」
イグナーツは、しっかりと握り合っている手を見つめている。オネルヴァと顔を合わせないのは恥ずかしいからなのだろう。
「わかりました。口づけをすれば、旦那様が助かると。そういうわけですね?」
人工呼吸のようなものであれば、人命救助である。目の前のイグナーツが魔力に侵されている状況から推測するに、きっとこの状況を和らげてくれるに違いない。
「口づけを……してもいいだろうか……」
躊躇うような口調であった。
オネルヴァもぱちぱちと目を瞬く。
「口づけ、ですか?」
夫婦となった二人であるが、夫婦のような触れ合いはない。触れ合いそのものがないのだ。
手を繋ぐのも、エルシーを挟んでしかしたことがない。直接二人で触れ合ったことはない。二人の間には必ずエルシーがいた。
「す、すまない……」
掠れるような声で、イグナーツが言葉にする。
「いえ。わたくしたちは夫婦ですから。その……口づけをしてもいい間柄と言いますか、なんと言いますか。ですが、突然そのようなことを言われたら、驚くと言いますか……」
オネルヴァは混乱していた。なぜ、急にイグナーツが口づけをしたいと言い出したのかがまったくわからない。
オネルヴァに求められているのはエルシーの母親であって、彼の妻ではない。家族と口にしながらも、その家族もエルシーが中心に成り立っているものと思っていた。
「人工呼吸のようなものだと……人助けだと、思ってくれたらいい……」
イグナーツは、しっかりと握り合っている手を見つめている。オネルヴァと顔を合わせないのは恥ずかしいからなのだろう。
「わかりました。口づけをすれば、旦那様が助かると。そういうわけですね?」
人工呼吸のようなものであれば、人命救助である。目の前のイグナーツが魔力に侵されている状況から推測するに、きっとこの状況を和らげてくれるに違いない。