初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 オネルヴァはエルシーのスプーンに手を伸ばすと、シチューをすくう。そこには、一つだけ、小さな人参の塊が見えた。
「エルシー」
 オネルヴァが優しく微笑めば、エルシーも観念したのか口を開ける。オネルヴァはゆっくりとスプーンをエルシーの口元にまで運び、口の中へと入れた。
 ぱくっと小さな口が閉じる。
 その様子から、イグナーツも目が離せなかった。
「美味しいです。シチューの味がします」
 エルシーの言葉に、オネルヴァも満面の笑みを浮かべた。
「お母さま、お母さまもお肉を食べましょう」
「え、えと……」
 形勢逆転。エルシーが言う通り、オネルヴァの皿には、まだ半分ほどの肉の塊が残っている。
「エルシーがお母さまに食べさせてあげます」
「あ、あの……」
「ね、お母さま」
「エルシー」
 イグナーツは、少しだけ声を荒げた。というのも、オネルヴァは明らかに困っているし、その様子がおかしいからだ。
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