れんれんと恋するための30日


目を閉じると、そこには蓮の笑顔しか浮かんでこない。
蓮の息遣いや蓮の香りが、そして蓮の柔らかいくちびるの感触が、福の睡眠の邪魔をする。


「幸~、幸~」


福はやっと幸の近くに帰ってきた。
この幸せを幸にも分けてあげたい。


「福、お帰り…」


福はすぐに分かった。
幸が泣いている。


「幸、どうしたの?」


「福、大丈夫だった?」


幸が福の存在を確かめると安心したのか幸の悲しみが薄れていくのが、福には分かった。


「福が…
福が私の目を通して突然見えなくなって…
拓巳に向かって走っているところまでは見てた。

そしたら、突然真っ暗になって…
福の事を何度も何度も呼んだのに、全然応答がなくて…」


幸はまたあの時の恐怖を思い出していた。
また、福が、自分の前からいなくなってしまう恐怖を…


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