れんれんと恋するための30日
海から上がった福は、しばらく震えが止まらなかった。
そんな福は、着替えをし終えると日なたに座り体を温める。
蓮は持って来たブランケットを寒がる幸に巻き付けると、肩を優しくさすった。
幸はずっと遠くを見ている。
水平線の向こうに思いをはせているかのように。
「幸、今日はごめん」
蓮は急に思い出したように幸に謝った。
「何が?」
蓮は砂浜の一点をずっと見つめている。
「今日は、福の命日だった。
さっき、ふと思い出したんだ…」
「全然、いいよ。
全然、大丈夫」
福は元気がない蓮の顔を覗き込んで、そう言った。
「れんれんにも教えてあげる。
福はね、本当はお墓なんかにいないの。
だから、心の中で福のことを思い出してくれるだけでいいんだ。
場所なんて関係ない、命日も関係ない。
福の笑顔を忘れてなければ、それでいいの」
福は本当にそう思っていた。
ふとした拍子に思い出してくれるだけでそれでいい。
蓮の心の中で、小さな福が笑っているのならそれだけでいい…