れんれんと恋するための30日


福は家に入ると、真っ先にリビングに向かった。

パパとママの顔が見たい…

二人ともソファに座ってくつろいでいる。


「幸、今帰ったの?
早くお風呂に入ってね。ママ達はもう寝るから」


「うん…」


福は、二人の後ろ姿にさよならを言った。
幸の日常を壊すことは許されない。
今、二人の顔を見たら涙で余計な事を言いそうだから。

ママ、パパ、私を愛してくれてありがとう…
元気でね、さようなら…

福は涙が止まらなかった。
自分の部屋に入ると、心臓の音がやかましいほどに大きく聞こえる。
でも、その心臓の音を聞いているとなんだか心が安らいだ。

まだ、私は生きている。

福は、幸の机の二番目の引き出しを開けた。
ここに何が入っているのか、福は何でも知っていた。
この引き出しには、幸と福の思い出の品がたくさん入っている。
特に福が幸に書いたたくさんの手紙が、大切に箱の中にしまってあった。

福は、そこにもう一つ、小さなメモに書いた手紙を入れて、また箱を閉じた。

“幸、れんれんと結婚してね、福からのお願いです”

幸が気づくことはないと知りながら、福は、そっと、その箱をまた引き出しに戻した。


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