れんれんと恋するための30日



福は中々寝つけなかった。
寝てしまったら、もうそのままこの場所で目覚めることはない。

でも、幸には会いたい…
幸にちゃんとありがとうを言わなくちゃ…

そう思うと、福はいつの間にか深い眠りの底にいた。


「福、大丈夫?」


幸の柔らかい指先が福の耳をかすった。


「うん、大丈夫だよ。
皆にちゃんとさようならを言えたから」


福は泣くのを必死に堪えた。
最後は明るく笑って別れたい。
そうじゃなきゃ、幸は前へ進めない。


「福、本当に行っちゃうの?」


幸の方が泣いていた。
また、妹と離れる寂しさを思い出しているみたいに。


「幸、泣かないで、私も泣かないから…
明日になれば、幸はまた普通の日常に戻るの。
私の事なんて覚えていないんだよ。

だけど…
幸が今のことを忘れてしまっても、これだけは伝えたい。

幸は、これから福の要素がたくさん入った幸になるってことを。
だから、福の事を思って泣いたりなんかしなくていい。

だって、幸の中に福はいるんだから…
本当の意味で、幸と福は一緒になったの…

だから、私は寂しくない。
だから、幸も泣かないで…」



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