れんれんと恋するための30日


透子は教室の壁にかかっている時計を見て、時間を気にしている。


「いいよ。分かった」


「ごめんね。
また、連絡する」


そんな蓮は、幸に無性に会いたくなった。
その気持ちがどこからきているのかは、まだ何も分からない。
ただ、幸の天真爛漫な笑顔に癒されたいだけなのかもしれない。

蓮はさりげなく漫研部の部室の前を通り、中を覗いた。
でも、幸の姿は見えない。
その時、蓮の前を斎藤道が通り過ぎた。
まるで時間がないみたいに。
初めて、斎藤道を間近で見た。
中性的で変人にしか見えないこの男と、透子は一体どういう関係なんだ?

すると、道も振り返り蓮を見た。
まるで、弟を見るような優しい眼差しで。
蓮は何もなかったように廊下の窓から外を見て、誰かを捜しているふりをした。
まだ、道と二人きりで何かを話す勇気はない。


あ、いた…

校庭の隅で、拓巳と一緒にストレッチをしている幸を見つけた。
蓮の中で、一気に嫉妬の炎が燃え上がる。
俺は、透子の道より、幸の拓巳の方が許せない。
拓巳と肩を並べて、楽しそうに走っている幸の姿を見るだけで腹が立つ。

俺が、今、好きなのは幸なのか?
幸せそうに拓巳と話してる幸を、今すぐ連れて帰りたかった。


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