君と笑い合えるとき
パッと溢れそうな笑顔。

私はそれを,よく知っていた。

同い年の,友達で,名前は……赤坂



「ふみくん?」



私の呟きへの返答代わりに,文くんはにぱっと目を細める。

文くんは,高校3年生のとき,初めて同じクラスで知り合った人。

歩み寄ればいつも目線は私と同じ高さにあって,どこにいても真ん中になるどこか特別な人。

男の子らしい爽やかさは,誰にも負けなくて。

女の子にもよく噂されていたのを憶えてる。



「久しぶり,文くん。1人なの?」



私服姿で1人彷徨い歩いていた文くん。

いつも誰かと一緒だと思っていたから,少し不思議に思った。

近所に住んでいるから,ただのお散歩かもしれないとも思う。



「ううん,友達と何人かで来てて。ちょっとだけ,一緒に回る?」



口をすぼめた,優しげな笑み。

どうやら文くんは,私との再開を純粋に喜んでくれているようだった。

でも,と,後ろを振り替える。



「ごめんね,文くん。誘ってくれて,嬉しかった。でも今日は,一緒に来てる人がいるの」



精一杯の紹介は,私と静流くんの関係そのものみたいで。

何か適当な,タイトルが欲しいと思った。

じくりと湿って,また何かが崩れていく。

私の後ろに目を向けた文くんは,驚いたように目を丸くした。
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