君と笑い合えるとき
「その前に,さ。間宮さんと一緒にいた人って……彼氏?」



いつも同じ高さで合っていた瞳が,真横にすっと流れる。

外れた視線に注意が逸れた私の目には,拳を握っているのがうっすら見えた。

たった2人で,浴衣まで着て。

それでもそんなわけないって,きっと誰もが答えるのに。

私が答えなくても,そんな結論はやってこないはずなのに。

わざわざ問いかけて来る文くんに,私らしからぬ笑みがこぼれる。



「……ううん」



認めたくないけど,多分。

彼氏とかそんな関係,私には届かない。

諦めたくないと言いながら,いつもそう思っていた。

恐れるものがある内は,誰だって今が大切でしょ……?

今の言葉を,静流くんといる時に聞かれなくてよかった。

否定する私は,とても悲しくて。

きっと不自然なほど,動揺を隠せなかったから。

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