君と笑い合えるとき
「格好いい人だったね」



じわりと目が開く。

素直で真っ直ぐな,飾り気ない言葉。



「……うん」



そうでしょ?

って。

自分がどんな表情をしたのか分からないけど。

柔らかい糸がほどけるように,綻ぶ口元。

誰が見ても,誰が知り合っても。

静流くんは,誰より格好いいんだよ。



「───間宮さん,俺。間宮さんが好きです。今日逢えたこと,運命って事にしたい」



付き合ってください,と。

突如正面から告げられた言葉,その瞳。

真っ直ぐ手を伸ばすようなストレートな表現に,私は緩んだ表情をとめた。

……え……?

と,ただ向くだけで綺麗に合う瞳。

同じくらいの身長で,いつも無邪気に合う瞳が好きだった。

話すときの,優しい口調と緩む瞳が好きだった。

数少ない大事な男の子の友達だと思っていたのに。

多分ほんとは,ずっと前からそうじゃなかったこと。

私は初めて,その文くんの気持ちを知った。

文くんの好きは,友達の好きじゃなくて。

私の,静流くんへのすき。

初めて他人に向けられた好意に,咄嗟に何を返していいのか分からない。

文くんの全てをインストールし,アップデートするように。

思い出や情報が,頭を流れる。
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