君と笑い合えるとき
「………………そっか……」



私を見つめた長い数秒のあと,しょうがないねと文くんが下手くそに笑った。

苦笑に似たその表情は,今までも何度も見たことがある。



「すぐそこに,人の少ない小さな神社があるんだ。さっきの場所からも,十分見えるよ。人多いし,そこまで送る」



危ないから,と。

文くんは笑った。

人混みで繋がるかも分からないし,そこで連絡とったらいいよと付け加えて,背を向ける。



「……嫌じゃない?」

「嫌なわけ,ないよ」



私たちは言葉少なに,しんとした暗い森を背にして,ゆっくりと歩いた。
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