君と笑い合えるとき
「どうして離れるの?」



囁くような,呟くような声だった。

思わず動きを止めると,静流くんが私の頬を撫でて,私の真っ赤な顔が無防備にも晒される。



「どうしてって……」



一歩,また近づいて。

ぎゅっと甘く囚われた。

離れる選択肢は奪われて,私は静流くんの腕の中でどきどきと小さくなる。



「怒ってるの……? ごめんね。静流くんは優しいからって,私が何しても分かってくれるからって……甘え過ぎちゃった」



最初は,きっとそんな事無かったの。

私の行動は,もっと周りに気遣って合わせたものだった。

でもいつからか,静流くんの前でこんなに自由に動き回るようになって。

私は目を離しちゃいけない存在なんだよ,ずっとここにいてね。

多分,今までずっと無意識に振り回してた。

やり過ぎたこと,心配をかけたこと。

許して欲しい。

ごめんね。
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