好きなひとの好きなひと
  


  ______2016年


「219番…‥219番」


「あ


あった!」


私は驚いて普段出ないような大声を出した。


「せつな、受かったの?」


横から私に声をかけたのは幼馴染の寝屋川 海音(ねやがわ うみね)
なんだか海音は緊張していたのか、少し声を震わせていた。


「うん、受かったよ!」


「そっか、俺も!受かったよ」


「ほんと?嬉しい」


私は安心して思わず笑みをこぼした。


私たちは第一志望の中学校の合格発表を見に来ていた。


海音とは同じ塾の同じクラスに通い、毎日第一志望の中学校に合格できるよう、努力してきた仲だ。


だからこそ、海音の合格が何よりもすごく嬉しかった。


海音も、心から私の合格を喜んでくれていた。


私たちは受験のプレッシャーに負けず、晴れて 私立 篠宮西(しのみやにし)学園中等教育学校に合格することができた。


篠宮西は進学校で、立地がよく、制服もおしゃれ、この地域に住む者なら一度は憧れる名の知れた学校だ。




「私たち、本当に春から篠西(しのにし)生になるんだよね……」


「何言ってんだ、当たり前だろ」


「全然想像つかないや」


「はは、確かにせつなが中学生になるところは想像つかないわ」


「え、なにそれどういう意味?」


「せつなはずっと子供っぽいんだろうなって」


海音はくすっと笑った。


「なっ、失礼な……そういう海音だって子供っぽいくせに、背とか」


「今身長の話は関係ないだろうが!」




「「……ぷっ、あはははは」」



「俺たち中学入ってもずっとこんな感じなんだろうな」



「ね」


これからどうなるんだろう。


楽しいことで溢れかえる中学生活を送れますように__


海音といっしょに……




_____





 深い眠りについていた。


そしてふと夢であの日を思い出した。



「海音……」


ぼそっと呟いたその名前に、行き場のない苦しさが
私の心をいっぱいにした。


ねえ海音、なんで。


わたしは今でも思い出す、海音の笑顔を



_________



3年後の今、海音はもうこの世界にいない。

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