天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 でも、今回の件がなくても理想通りに行くとは限らないし、前向きに考えれば、子供がいなくて動きやすい今のうちに異動してしまうのもアリかもしれない。二、三年で戻ってきてからでも、年齢的にまだ十分子供も望める。

 今ならゴンさんという強い味方もいるのだし、と思いながらぽつりと呟く。

「ゴンさんとまた働くのも悪くないかもなぁ……」
《んん? さっきからなんなんだ、俺を惑わせようとして》
「してませんよ!」

 やっぱりテンポのいい会話が楽しくて、笑って肩の力が抜けた。

 それからもしばらくたわいのない話をし、また近々松本の皆と会おうと約束して電話を切った。再び夜景を眺めて、小さなため息を吐き出す。

 明日暁月さんが帰ってきたら、写真については伏せて、北海道へ行く可能性があるとだけ伝えよう。

 すべてを話したら暁月さんはなんとかしようと動いてくれると思う。でも、それこそ彼の仕事の妨げになるだろうし、せっかくわだかまりをなくせそうなお義父様との仲にまた亀裂が入ってしまうかもしれない。

 私も異動を望んでいると言えば、きっと強く反対はしないだろう。相手を縛るのが嫌いな彼だもの、自由にさせてくれるはず。

 大丈夫、私たちの心は繋がっているのだから。離れてもうまくやっていけると信じている。


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