天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 しばらく空中待機をしてもらうよう伝えたが、HA479便にどれだけ燃料が残っているか正確にはわからない。パイロットは普段以上に気を張り続けているし、あまり長く待たせたくないのが本音だ。

「どうしよう……連絡も着陸もできないこの状態で、もし他にも機体や乗客に異常が出ていたら……」

 こちらでも雨雲が映るモニターでドローンらしきものを探しながら、私はつい不安を漏らした。やはり連絡が満足にできないのは怖い。

 眉をひそめる私を励ますように、城戸さんがぽんと肩を叩く。

「暁月って、昔から要領がよかったんだよ。それに、自分の大事な友達とか信念とか、そういうものはちゃんと守るやつだった。だから今も、乗客の安全が脅かされるような状態なら、使える手段を駆使してなんとか伝えようとしてくるはずなんだ」

 彼の瞳は力強い光を湛えていて、動揺のないその姿にも、今の言葉にもはっとさせられる。

 そうだ、無線交信ができなくても、信号を変えて異常を知らせるサインくらいは出せるだろう。その考えに至らないなんて、まだまだ冷静さが足りなかったか。

「大丈夫。今回もきっと涼しい顔して降りてくるよ」

 わずかに口角を上げてみせる彼に、気持ちが奮い立たせられた。城戸さんのように、私も信じて待とう。

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