天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「明日から、莉真もゴンさんもいないなんてめちゃくちゃ寂しいけど、私も頑張る」

 気持ちを奮い立たせるように言う彼女につられて、私も気合いを入れ直す。「月一で帰るつもりだから、またすぐ会えるよ」と茜だけでなく自分自身も励まし、ランチを終えるまで明るい話題で盛り上がった。



 昨日、両親共々寂しさを振り切ってお別れし、いざ東京へとやってきた。四月でも稀に雪が降る松本とは違い、もう上着はいらないほど暖かい。すでに桜の木も緑が多くなってきている。

 新居は、またいつ転勤になるかわからないし、金銭面も考えて社員寮に入ることにした。五階建てのマンションで、築年数は経っているがまあまあ綺麗だし、1Kの部屋はひとりで暮らすには十分な広さだ。

 引っ越した当日は部屋の片づけで一日が終わり、今日からいよいよ出勤する。

 午前七時五十分、春らしいベージュローゼのリネンジャケットにクロップドパンツを合わせた、いつものオフィスカジュアルな服装で羽田空港へ。新天地である東京空港事務所は、管制塔に隣接した庁舎の中にある。

 指定された場所に向かうと、私の上司になる添田(そえだ)さんという女性とまず挨拶をした。

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