不埒な上司と一夜で恋は生まれません



 和香の住むアパートは、もう新しくはないが、手入れの行き届いたアパートで。

 前庭の木々はよく整えられていて、美しい花々も植えられている。

 やれやれ、と和香は二階の自分の部屋の前に行き、鍵を開けようとして気がついた。

 鍵がないっ!

 何処に忘れたんだろうっ?

 呑み屋?

 それとも、課長の家っ?

 そういえば、さっき、カバンが床に落ちてた。

 落ちた弾みで、鍵が飛び出したのかもっ。

 革ででてきている、真っ赤なりんごの可愛いふかふかキーホルダーがっ!

 いや、それ以前に、家に入って寝られないっ。

 すぐ目の前にあると思った、ふかふかの布団が天竺くらい遠くなった。
< 13 / 438 >

この作品をシェア

pagetop