不埒な上司と一夜で恋は生まれません
「私、課長の前で、ゴマすってますよっ」

「……阿呆か」

「木の香りと胡麻の香りで、なんだかお寺にいるみたいです」

「寺で胡麻の香りなんてするか?」

「なんかそういうイメージなんですよ。
 えーと、胡麻豆腐とか出るではないですか」

 精進料理で、と言ったあとで、和香は小首を傾げ、考える。

「あと、もうひとつ、お寺で胡麻関係のなにかありましたよね」

「……まさか、護摩(ごま)焚きのことか?
 あれ、胡麻、放り込んで焼いてるんじゃないからなっ!?」
と言われたとき、トンカツが来た。

 揚げたて、サクサクのトンカツだ。

「美味しそうですねっ」

 目の前に黒くどっしりとしたお皿に載ったトンカツが置かれる。

 耀が溜息をついて言った。

「こんな奇妙奇天烈(きてれつ)な女の何処がよかったんだろうな……」
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