不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 


 やはり、昨日は男として、送っていくべきだったよな、と思いながら、耀は和香の後ろ姿を見送っていた。

 和香はエレベーターの前で出会った常務と談笑しはじめる。

 企画事業部が仕切った社のイベントのとき、常務も来ていて、仲良くなったらしい。

 微かにもれ聞こえてくる声に、つい、耳を澄ましていると、

「いや~、私、一人っ子なんで」
と笑う和香の声が聞こえてきた。

 えっ?
 一人っ子っ?

 姉は何処へ消えたっ。
 蚊を連れ込まれた姉はっ!?
と思ったとき、真横で声がした。

「なんだ、蚊を連れ込まれた姉って」

 同期の藤川時也(ふじかわ ときや)が立っていた。

 どうやら、心の声が口からもれてしまっていたらしい。
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