不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 長い廊下は新築の木の香りがしていた。

「課長、水とか呑まなくていいですか?」

 うんうん、と耀は頷く。

「お手洗いは大丈夫ですか?」

 うんうん、と耀はまた頷く。

 そのまま耀は二階の寝室に行き、ベッドに倒れ込んだ。

 和香は自分も猛烈に眠いのを我慢し、耀の身体の下から掛け布団を引っ張り出し、耀にかけてやる。

 寝室は和風モダンな旅館のようで。

 枕元の灯りに照らし出されてオレンジ色に染まる真っ白でふかふかの布団が気持ちよさそうだった。

 私も家に帰って、こんな立派じゃないけど、もふもふふかふかの布団に包まれて眠りたいっ、と思った和香は、

「課長、鍵は何処ですか?」
と急いで訊いてみた。

 だが、よく考えたら、鍵を持って帰るわけにもいかない。
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