「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 おれには、それ以外にも懸念していることがある。

(眠れそうにないな)

 ガラス扉の前に立ち、向こうに広がる夜の闇を見つめた。

 この隠れ家に葡萄酒はあるかな?

 あったら一杯ひっかけよう。

 そう思いたつと、いてもたってもいられない。

 続き部屋のカヨは眠っているのか、耳をすましてもなんの物音も気配もない。

 そっと部屋を出た。それから、一階に降りた。
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