「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「フェリペ、あなたってほんとうにやさしくて可愛いわね」

「可愛い」は必要なかったけれど、つい本音をもらしてしまった。

「あなたのその言葉で元気が出たわ。うん。もう気にしない。ありがとう、フェリペ」

 ほんとうはそこまで気にしていない。というか、自分が男でもこんなわたしにそそられるわけがない。それがわかっているから、気にならない。

 ただ、第一王子に言われたから腹が立っただけ。

 だけど、心配してくれているフェリペを安心させたかった。

 そのとき、あることに気がついた。

 もしかして、フェリペはわたしのことを……。

 わたしが彼のことを弟みたいに思っているように、彼もわたしを姉と慕ってくれているの?

 きっとそうだわ。だから、これほどまでに気遣ってくれているのよ。

 そう確信すると、よりいっそう彼のことが愛おしくなってきた。
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