「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

臀部の尻の痣

「へー。まっ、もう関係ないがね。では、おれはいまの情報の礼をしよう」

 クストディオったら、驚いているくせにポーカーフェイスを気取って。

 しかも、予期せぬことを言いだした。

 彼は、いつの間にか一冊の本を手に持っていた。おもむろに頁を開けると、そこにはさんである封筒を取り出し、ローテーブルの上に置いた。

 その封筒には、これみよがしにバラと獅子の紋章印が押されている。蜜蝋で封をされていたようだけど、すでに開けられている。

「ヘルマン。読んでみてくれ」

 そう勧めたクストディオの声は、なぜか厳粛さがにじんでいた。
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