「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「エドとフェリペは大丈夫かしらね?」

 人間、どうしていいかわからないときはとにかくなにか話をしたくなるものなのかしら。

 すくなくとも、わたしはそう。

 だから、とりあえずは気にかかっていることを口にだした。

 机の上に積み重なっている本を読んでいたクストディオは、本から顔を上げこちらに向けた。

「大丈夫だ」

 視線が合うと、彼はそう断言した。

「二人のことが心配なのか?」
「当り前でしょう? あなたは心配じゃないの? 彼らは、わたしたちを守ってくれようとしているのよ」
「心配? ああ、そういう意味ではしていない。なぜなら、彼らを信用しているからだ。ヘルマンも言っていた通り、彼らは強い。いいや。ヘルマンが認識している以上に強い」

 それはそうなのでしょう。

 だけど、彼らのほんとうの強さなんて、見たことがないからわかるわけがない。

 それは、クストディオも同様のはず。
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