「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

二人きりの激しい夜

「とにかく、今夜を乗りきる。そうすれば、つぎはおれたちの番だ。だろう?」
「ええ、そうね。だったら、わたしもエドとフェリペのことを信頼して明日に備えるわ。そう決断すると、楽しみになってきた」
「そうこなくては。カヨ……」

 彼は、わたしの手に自分の手を添えた。

 ロウソクの淡い光の中、彼の美貌が赤く染まっているように見える。

「その……」
「なにかしら?」

 クストディオが言い淀むなんて、めずらしいこともあるのね。

 気長に待っているけれど、彼は続きを言いだしそうにない。
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