「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「ということは、まったくご存知ない、と?」
「どうやら偽の情報をつかまされたようだな」

 アルマンドのさわやかな笑声が執務室内を駆けまわる。

 そのタイミングで、扉がノックされた。アルマンドの「入れ」という許可とともに扉が開き、先程わたしを執務室内に呼び入れたのとは違う執事が慌ただしく入ってきて彼に耳打ちした。

「なんだと?」

 アルマンドの形のいい眉がひそめられた。そして、こちらへ視線を戻した。執事もまた、こちらを見た。

 その二人のわざとらしい所作は、わたしに警戒と不安を与えるのに充分だった。

(嫌な予感しかしないわ)

 うしろに立っているエドムンドとフェリペから、異常なまでの緊張感が伝わってくる。
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