「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 どちらも控えめに言っても美味しすぎた。

 だから、もう一度買いに行ってもらった。

 いつでも食べられるように。

 ランチ後、あらたなパンとチーズを馬車に積み込み、再び馬車に揺られ始めた。

 物心ついたときからずっと皇子ダニエル・ウリバルリの婚約者だったわたしは、正直なところあんなクズの面倒をみるより勉強をしたかった。勉強と言っても、ほんとうに様々な分野を広くである。だから、どれだけ他国への留学を望んでいたことか。

 生まれ育った国、皇都、地区、そして屋敷や皇宮だけでなく、もっと世の中というものを見たかった。

 が、実際には他国に留学どころか、皇都から出ることもままならなかった。さらには、セプルベタ侯爵領に帰ることも許されなかった。こっそり街にスイーツを食べに行ったり、図書館や本屋に行って本を借りたり買ったりする程度がせいぜい。

 もしもクズのダニエルと婚約しなければ、あるいはさっさと婚約破棄されていれば、きっと他国に留学していたはず。
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