【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
第七章
 ドーン、ドーン。パッ、パッ――。
 その日は朝から花火が上がっていた。与えられた部屋の窓から外を見ると、青い空にうっすらと花火の跡が残っている。
 今日から五日間、このマヤンでは盛大なお祭りが開かれる。
 魔石の恩恵を受けているマヤンでは、魔石を採掘している鉱夫たちに感謝を示し、感謝祭と称した祭りが開かれるのだ。また、感謝祭には鉱夫たちの安全と発展を願う意味も込められている。
 採掘場という閉鎖的な空間で、危険を伴う仕事をしている鉱夫たちの安全祈願をするところから祭りは始まる。この花火は、祈願が始まる合図であった。
 いつもは夕方から開かれるこの娼館も、今日は朝から店を開けていた。それは、目当ての娼婦を祭りに誘いたい客たちのためである。
 イレーヌも客の男に誘われて、祭りへ行った。だが、エミーリアを誘うような客は、今のところいなかった。ただ、あのバジムがどう動くかがわからない。だが彼は、祭りの間も仕事があると言っていたので、昼間の動きはないだろう。
 透き通る青空を窓越しに見つめながら、エミーリアはほっと息を吐いた。
 店が開いていても、予定のないエミーリアは部屋で待機だ。望むならローランと祭りを楽しみたい気持ちはあるが、その望みが贅沢な望みであるのもわかっている。
 空から視線を下に落とすと、色とりどりのテントが立ち並んでいる。この街を訪れた時に、トレイシーが説明してくれた内容を思い出す。
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