【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「魔力交感のメリットはなんですか? 私は今、団長に魔力を注ぎました。これが魔力の受け渡しですよね。魔力受け渡しと魔力交感の違いは、一体なんなのでしょう」
 エミーリアにはそれがわからなかった。そもそも、魔力交感と呼ばれる方法があるのを今知ったのだ。
 彼女はまだローランに抱きしめられていて、すぽっと彼の身体に覆われている。
「魔力の受け渡しは、君が持っている魔力を一方的に俺に注ぐだけだ。例えば、一の魔力が君から俺にうつる。だが、魔力交感は互いの魔力を高め合う方法だ。一しかない魔力も、交感をすれば二にも五にもなる。魔力枯渇の状態になった場合、枯渇した相手に魔力を渡すのは非常に危険なんだ。枯渇者に魔力を吸収されてしまうからな。そういった場合は、魔力交感をして、徐々に互いの魔力を高め合う」
「では、団長は今、魔力枯渇の状態だったのですか?」
「ちがう、だからそれは忘れてくれ」
 忘れてくれと言われても、まだ彼の腕の中にいて、体温も鼓動も伝わってくるくらい近くにいるのに、無理な話である。
 魔力枯渇状態でもないのに、魔力交感したいと言われた意味をどう捉えたらいいのか。
「だめだ。これ以上君の側にいると、いろいろと危険だ。魔力は充分にもらった。そろそろ俺は行く。留守の間、ここを頼む」
 そう言ったローランは、腕の中からエミーリアを解放する
 エミーリアが魔法陣から離れると「お気をつけて」と柔らかい口調で見送った。
< 65 / 246 >

この作品をシェア

pagetop