【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
第三章
 ザーバラン国の東の国境にある街、マヤン。ここは魔石が採掘できるボナ山があり、賑わいのある街である。
 街の外れにある関所を越えれば、すぐに隣国のロマシチ国の領土となる。
 ローランがここに来なければならなくなったのは、魔石採掘場の崩落事故が原因であった。
 魔石採掘している採掘場が崩落した。その一報が入って来たのは、今から五日前。こういった情報のやり取りも、転移魔法の基礎のような魔法で行える。
 だから、各地に派遣している魔法騎士の中には、この魔法が使える者たちを必ず配置する。
 崩落事故の原因を探っていくと、どうやら隣国ロマシチが動いているのではと疑いが強くなったとのことだった。
 火のないところに煙は立たぬ。
 それが事実であるか否か、ローランには確認する必要があった。
 マヤンには魔法騎士やその家族が常駐する城があり、そこを砦と呼んでいる。城は、マヤンが一つの小国であったときの名残である。その一室に転移魔法陣が常設されており、ローランはそれを用いて王都からマヤンまで転移する予定であった。
 転移予定時刻は、先に砦にいる部隊長に連絡をしてあり、現在、マヤンの街に派遣されているのは、魔法騎士団の第五部隊である。
「団長、お待ちしておりました。部屋を準備してあります」
 転移魔法陣のある一室で、ローランを出迎えてくれたのは第五部隊部隊長のトラフィム・ラゴーである。派手な青い髪が目立つ男であるが、性格は控えめである。青い髪も、彼の出身地では珍しいものではないと言っていた。
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