【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
「だから、律さんに対抗意識燃やしてるだけの人とは契約しないって言ってるでしょ?」
「なっ⁉ 前にも言ったけど、俺は律さんのことが無くてもお前を――」

「……緋奈ちゃん、ちょっといいかな?」

 潤くんの言葉を遮って声が掛けられた。
 見ると、満くんが少し真面目そうな顔をして立っている。

 頭の痛くなるような沢くんからの催促と、うんざりするような潤くんの言い訳から逃れることが出来そうだと思った私は二人から離れて満くんの近くへと行く。

「どうしたの?」
「うん、ちょっと大事な話があってさ。付き合ってくれるかな?」

 いつものように穏やかに微笑む満くんに私は「もちろん」と答えた。

「満くんには色々悩みも聞いてもらったし。大事な話だって言うなら聞くよ」
「ありがとう、じゃあちょっと座って話せる所に行こうか。……あ、お前たちは来るなよ?」

 潤くんと沢くんに釘を刺す満くん。

「えー? またおあずけー?」
「ったく、仕方ねぇな」

 二人は不満そうにしながらも離れて行ってくれた。

「……良かった、今ちょっと困ってたんだ。満くんが声を掛けてくれて助かったよ」

 ありがとうと伝えると、「どういたしまして」と返って来る。
 その笑顔が、少しだけいつもとは違って見えた……。
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