幸せの伝書鳩 ハートフルベーカリーへようこそ!

10.

 男の子が壊れたラジコンを持って泣いています。 どうしたんでしょう?
「あの子に壊されたの。 飛ばないの。」 おじさんもさっきから溜息ばかり吐いています。
「あの子は言うことを聞かない子だからねえ。」
男の子はラジコンを持ったまま歩いていきました。 どうやら友達を探しに行ったようです。
 しばらく行くとブランコで遊んでいる男の子に会いました。 「どうしたの?」
「このラジコンを壊されちゃったんだ。 飛ばないんだよ。 それでね、その子を探してるの。」
「どんな子なの?」 「丸井メガネをかけた子だよ。」
「ああ、あの子ならもうちょっと先へ行ってごらん。 遊んでるから。」
 教えられたとおりに男の子は歩き始めました。 すると、、、。

 15分くらい歩いたでしょうか? メガネをかけている男の子が遊んでいるのを見付けました。
「ねえねえ、このラジコンさあ壊れちゃったんだけど、、、。」 「知らないよ。」
「でもさあ、君が持ってたんだよ。」 「知らないってば。 あっち行け!」
メガネの子はものすごい顔で怒り出しました。 「そんなこと言ったって、、、。」
男の子はどうしたらいいのか分からなくなって泣き出しました。 その時です。
何処からか賑やかな笛の音が聞こえてきました。 「何だろう?」
「さあさあ、皆さん 美味しいパンはいかがかな? メロンパンもブドウパンもクリームパンも何でも有るよ。 いかがですか?」
ピエロのかっこうをしたおじさんがパンを籠にいっぱい入れて歩いてきました。
 「坊やたちも美味しいパンはいかがかな? メロンパンはいかがかな?」 何とも言えない甘い匂いが漂ってきます。
メガネの子はパンが欲しくなっておじさんの所へ飛んで行きました。
「一つください。」 「あいよ。 これは焼き立てのパンだからね。」
おじさんはパンを袋に入れながら男の子を見ました。 「あの子にもパンをあげてくれるかな?」
メガネの子はおじさんが言うので仕方なくラジコンを持っている男の子にもメロンパンをあげました。
おじさんは二人が美味しそうにパンを食べ始めたのを見て何処かへ行ってしまいました。

 しばらくするとメガネの子がもじもじしています。 何でしょう?
「どうしたの?」 「いや、その、あの、、、。」
何か言いたそうにしています。
でも緊張してしまって何も言えません。
「勇気を持って言うんだよ。 怒らないから。」 喜光君が耳打ちしました。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あのさあ、ラジコン ぼくが壊しちゃったの。 飛ばないから蹴飛ばしちゃって。 ごめんなさい。」
「そうだったの? このラジコン 飛ばないしどうしようかって思ってたんだよ。 そしたらほんとに壊れてて心配したよ。」
「ほんとにごめんね。」 「いいよ。 おもちゃはいっぱい有るから一緒に遊ぼう。」
「いいの?」 「だってぼくたち友達じゃないか。 ずっと友達だよ。」
仲直りしたようですね。 喜光君も嬉しそうです。
遠くからおじさんもじっと見てましたよ。
 素直に言ってしまうことですね。
失敗は誰にだって有りますから。
それを黙ってたらいつまで経っても信用されません。 嫌だなって思うのは最初の一瞬だけ。
言わなかったらあなたは死ぬまで疑われたままなんですよ。
失敗したときは迷わずに謝っちゃいましょうね。
言ってしまうことです。 でも嘘はいけません。
自分がやっていないことまで謝ることは無いんですからね。


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