赤と黒に溶ける

「来年またとってやるから、とりあえずこれで我慢しろな」

 来、年――?

 言われた言葉の意味を考えながらぽかんとしていると、佑くんが黒のヨーヨーに結ばれたゴムの輪っかを、私の右手の中指に引っかける。

 そうして私の頭をぽんっと撫でると、佑くんが黒いヨーヨーのついた手を引いて立ち上がった。

 緩く繋いだ手の真ん中で、私と佑くんの黒色が揺蕩う。

 ふたりでひとつの黒色を揺らして歩き始めたとき、私たちの上で、大きな赤い打ち上げ花火が音を立てて弾けた。

「花火、始まったな」

 振り向いた佑くんが、目を細めて私を見つめる。

 その向こうで弾ける鮮やかな赤色の閃光が、キラキラと私を魅了して。ドキドキと胸が高鳴る。

 美しい赤の閃光は、やがて、夏祭りの黒い夜空にゆっくりと溶けていった。


Fin.
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