赤と黒に溶ける
すんっと鼻を啜って、割れたヨーヨーの破片をつかむと、佑くんが私の顔を横から覗き込んできた。
「千陽、泣いてる?」
佑くんが心配そうに聞いてくるから、余計に泣きたくなってくる。
泣きたくなるのは全部、佑くんのせいだ。
だけどそんなことは言えないから、割れたヨーヨーを手のひらでぎゅっと握りしめる。
「壊れちゃったから。せっかくとってもらったヨーヨー……」
涙の理由を誤魔化すためにそう言ったら、佑くんがふっと笑う気配がして。
黒い楕円が、ゆらりと視界を横切った。
「そんなの、どうせいつかはダメになるだろ。ほら、お前の好きな赤じゃないけど」
目の前に垂らされたのは、壊れた赤色と同じ柄の、佑くんがとった黒のヨーヨー。
視線をあげると、揺れる黒の楕円の向こうに、歯を覗かせて笑う佑くんの顔が見え隠れする。