貴方に介護(あい)されたい。

一和目(大切なものはどこにも落ちてない。)

 そして、誰もいなくなった。
 遺骨を胸にだき、たった一人のお葬式。
 優しかった祖母は、今私の腕の中にいる。急なことだった。母が早世した事で、父は逃げるように私を母の母、祖母に預け行方不明。祖母は、年金とパチンコ屋さんの清掃員として生活を支えてくれていた。そんな祖母が職場で倒れたのが1週間前。心筋梗塞であった。苦しまずに旅立てたのがせめてもの救いではあるが、私はとうとう一人ぼっちになった。
 祖母に負担をかけまいと私も高校を卒業後、小さな会社の事務員として働いた。もう働かなくていいと何度も言ったのに祖母は笑っていつもこう言った。里帆のお金は里帆の結婚式で使いなさい。これが祖母の口癖だった。相手なんかいるわけないのに。こんな陰キャな私を好きになる人いるわけがないのに、祖母は、里帆は磨けば光るからと笑っていたな。
 これから私は、祖母との思い出のこの家で一人でずっと生きていくんだとなんとなく実感が湧いてきて、また憂鬱になった。
 祖母の死後手続きを終え、10日振りに出勤することができた。社長からは、出勤できるようになったら出社しないさいと温かいお言葉をいただいていたので、明日からの出勤の連絡をしたが、電話が繋がらない。忙しいのかなと思いながらも特に疑問も感じず、出社する。
 近づくにつれ、疑問が湧いてくる。あれ?なんか貼られていない?嫌な予感しかしない。会社に到着して呆然とする。シャッターには倒産のお知らせ。従業員は、全員解雇と書いてある。私は、隣にあるコンビニの店長さんに事情を聞いた。なんでも夜逃げらしい。いやいや、会社は事務員をしていた私が言うのもなんだけと特段赤字じゃなかったよとコンビニの店長に話をするが、奥さんが散財していたらしく、株で穴を空けて会社の資金を流用したらしい、とのこと。
 え?今日から無職。え?生活は?私が何をした?陰キャだから?暫く、会社呆然と眺め、やりばのない気持ちを抱えたまま、会社だった所を後にした。
 
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