いつどこで誰が何をした
みんなの視線が僕に集まる。
後ろで久遠さんの息を呑む声。
「ひかる…」
祐樹が消えそうな声で僕の名前を呼んだ。
「んー」
さした…
さした
刺した、かぁ
「ひかる…刺す…って?」
祐樹が力のない声で言う。
「…さあね。でも対象物の指名はない。だったら美術室で片っ端からいろんな物をぶっ刺してみるよ。まあ…ダメな気もするけど」
「ダメって…なんでだよ!」
祐樹が僕の代わりに取り乱す。
「山野の命令を思い出してみてよ。
『飛び降りる』だったら理科室内で飛び降りたとしても言葉的にはクリアのはずだ。でも理科室 “から” 飛び降りなきゃダメだった。
これはご都合ゲームだ。多分生ぬるいことではクリアと見なされない」
まあ簡単に言うと
「さすって言うのはおそらく…人体を」
僕の言葉に空気が凍った。
でも、だ。
ご都合ゲームだからといって犯人の思惑通りにことが進みすぎるのは面白くない。
せっかく僕に回ってきたんだ。
だったら、今後このゲームを進める上で少しでもプレイヤーが有利に立てる状況を作るんだ。
そのために…
「ねえ犯人さん!聞いてるんだろ?」
僕が声を張り上げたせいで何人かの生徒がビクッと肩を揺らした。
「ひ、ひかる?」
「今これはあんたのご都合ゲームになってる。こんな未完成で生ぬるい進行しかできないなんて面白くない。これはゲームマスター側とプレイヤー側の真剣勝負なんじゃないの?だったら都合よくことが進むように調整し続けてるあんたは卑怯だよ。正々堂々戦おうよ。そのほうがずっと面白い。僕は絶対クリアする。誰一人傷つけずに」
犯人は聞いてるはずだ。
この中に必ずいる。
「だからもし、僕が宣言通りにクリアしたら、今後都合よく運営をいじるのをやめてほしい。正々堂々真っ向勝負といこうよ」
しんとクラスが静まりかえる。
まあ、意味ないかもしれないけど犯人が聞いてることは確かなんだ。
これじゃあフェアじゃない。
高校生ごときが作ってるゲームのようだから納得のいくアンフェアぶりではあるけど。
まあ自ら参加したわけじゃないからハナからフェアじゃないか。
だからせめてさ、ゲームとして成り立たせようじゃないの。ルールは塗り替えられていくものじゃなくて、確固としてお互いの間に聳える壁であるべきだ。
僕のちょっと恥ずかしい演説の余韻でしんとしている教室。
時間指定は午前中だよね。さっさと終わらせよう。
と、その時だった。
ピロンピロン
と、僕のスマホが鳴った。
画面をつけると勝手にRINEが開く。
「あ。犯人からだ」
僕の単調な言葉にガタンと机を揺らして片桐たちが反応する。
「なんて来た!」
枕崎が席を立つ。
…はは、うざ。
「(笑)」
そして
メールの内容に修正がかかった。
ーーー
今日
美術室で
新田ひかるが
誰かをさした
ーーー
「あくまで、デスゲームだってことかな」
僕の携帯を見てみんなが静まり返った。
挑発には乗らないってか。