いつどこで誰が何をした


「これ?」
「なんだこれ、過去のニュース記事?」
「このサイトのリンクが貼ってあったの?」

僕に送られてきたリンクは、検索すれば誰でも入れるような一般のサイトだった。
過去の、とある事件の詳細をまとめたサイトだ。

教卓で僕のスマホを囲むみんな。


「これいつの事件?聞いたことない」
「連続殺人事件?あ、でも起こったのだいぶ前だ。俺らが小学生くらいの時」
「これがひかるさんと何か関係あるんですか?」
久遠さんが僕の顔を見る。

「読んでいけばわかるよ」


「〇〇町連続殺人事件。この年最も残酷な無差別殺人事件…」
祐樹が音読する。
「11月4日午後5時ごろ、町内の病院でナイフを持った男が暴れているという通報が入り警察が駆けつけると、受付の看護師、患者、医者が血まみれで倒れていた…ってなんだこれ」

僕のスマホを祐樹から取って、今度は柳谷が読む。
「男が殺害した人数は19人。監視カメラの映像では遭遇した人を無差別に刺し殺していた。男はナイフを持って真正面から堂々と病院に入り犯行したと見られる。…ひどいな」

貸して、と今度は枕崎の元に。
「男はその場で逮捕された。特に抵抗もせず捕まったという。犯行動機は……」

「退屈だったから」


「…なにそれ」
「…怖」
「これがなんでひかるに?」
枕崎が僕を見る。
もー最後まで読みなよ。

「犯人の詳細、下の方にまとめられてるから見て」


枕崎がスクロールする。
「裁判の結果、判決は死刑。いまだ執行はされていない。犯人の名前は〇〇町に住む、当時29歳男性…っ」
そこまで読んだ枕崎が止まる。
「…何、どしたの」
隣にいた山野が不思議そうに枕崎から僕のスマホを取る。
そして画面を見て目を開いた。

「…山野?」
柳谷が首を傾げる。
「…〇〇町に住む、当時29歳男性…新田さとる」

山野が静かにそう言い、僕のスマホをみんなに見せた。
そこには新田さとるという男の顔写真がある。


墨で塗りつぶしたような黒い癖毛。
人より薄い不健康な白い肌。
つり目寄りの三白眼の目。
口角が常に上がっている、へにょんとした口元から見える八重歯。


気味悪いくらい、僕と同じような顔をした人物だった。


「……うそだろ…」
祐樹が掠れた声を出す。
「…なにこれ」
梅原が口元を抑える。
花里と成川が僕を見る。


「…新田さとる。僕の、実の父親らしい」


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