初めての恋はあなたとしたい
「美花。食べ終わったか? 向こうにいこう」

彼は私のトレイを持つと、片付けに行ってしまう。慌てて追いかけると、そのまま背中を押されるように食堂から出てしまう。
副社長である彼に連れられ、またみんなの視線を集めてしまい私は顔があげられなかった。どこに連れて行かれるのかわからないままついて行くと小さな会議室に入った。

「美花ちゃんは夏木くんと付き合ってるのか?」

さっきは呼び捨てだったのにまた美花ちゃんに戻ってる……。そんな些細なことが気になってしまうが、みんなに説明した通りの話を彼にもした。

「夏木くんはただの同期だってこの前も話したでしょ。サッカーのチケットを同期の子が行けなくなったので私たちに回ってきたの」

「同期にしては随分と仲が良さそうだったが…。この前は曽根くん、今度は夏木くんか」

剣のある言い方で私に詰め寄ってくる。
たっくんには何か言われる筋合いはない。夏木くんとはただの同僚だろうが、恋愛関係にあろうが、口出しする権利なんてない!
彼だっていつも恋愛してきたのを知ってる。今だってあの綺麗な女優さんがいるのに、どうして私に口出ししてくるの? 
こういうときだけ兄のように関わってこないでほしい。
ようやく治まっていたはずの涙が頬を伝ってくる。私は手のひらで涙を拭い、

「もう放っておいて」

それだけ言うと会議室から飛び出した。
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