初めての恋はあなたとしたい
翌日から社内がざわつき始めた。
写真は目隠しされていても、誰がどう見ても拓巳くんだと間違えようがない。そのため取材が殺到しているとのことだった。
当の本人は女優さんとの関係を否定したが、それ以上は漏れ聞こえてこない。
私への連絡も途絶えてしまった。
なんなの?
お兄ちゃんも何だか忙しそうで同じ家に住んでいても、いつ帰ってきているのかわからないくらい。
私たちのいる広報は、空港業務とはいえ同じ企業内でのスキャンダルとあってザワザワした空気が漂っていた。

「ねぇ、あの写真って副社長よね? やっぱり女優さんみたいな人を選ぶんだね。お似合いよね」

と祝福する声が聞こえてくる。
彼の隣に並ぶのは綺麗な人だとみんなが思っているのだ。やっかみではなく、お祝いのムードに彼自身の否定はかき消されていた。
ちょうど来ていた取材関係者も「実のところどうなんですか?」と探りを入れてくるので決まり文句の様に「お答え致しかねます」と繰り返し返答していた。
どうなっているの?
何度スマホを見ても拓巳くんからの連絡はきていない。
直前まであんなに本気だと言ってたじゃない。私の初恋が叶うのかもしれないって思っちゃったじゃない。
拓巳くん、酷いよ……。
複雑な気持ちのまま、私はどうしたらいいのか分からず眠れない夜を過ごした。
私から連絡しようかと思ったりもした。
でもなんて連絡するの?

あの人とはどんな関係なの?
付き合ってたの?
私が好きって嘘だったの?
他に好きな人がいたんだね。
すっかり騙されちゃったよ……。

彼を責めることも、問い詰めることも出来ない。
だって本当の話は聞きたくない。
まだ彼が私を好きだって思っていたい自分が心の奥にいるの。
連絡が来なくなっても、まだ信じ続けてるバカな私がまだいるの。
食べ物が喉を通らず、このところゼリー飲料ばかりで済ませていた。これだって何とか飲んでいる。食べたい気持ちは全くないけど、仕事があると思うから何とか飲んでいる。

「おい、大丈夫か?」

ふらっと立ちくらみがした。
立ち上がったところで目の前が一瞬白くなった。
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