初めての恋はあなたとしたい
気がつくと白い天井が見え、横から声がかかる。

「前田さん、気がついた?」

「あ……」

起きあがろうとすると女性に止められ、また横にされた。

「貧血よ。顔色が随分悪いけどご飯食べてるの?」

白衣を着た女性に尋ねられる。

「最近食欲があまりなくて……」

「何かあったのかしら? でもね、食事って大切なのよ。少しずつでいいから食べてね。食べてないと力も湧かないわよ。それに何も食べないと悪い方へと考えちゃうものよ」

私は黙って頷いた。
今の状態がいい訳ない。自分でも食欲がないからと食べていないのは良くないと思っていた。夜も眠れない日が続いていたから余計に食欲も湧かなかった。
仕事に支障をきたすなんてあってはならない。プライベートを仕事に引きずらないよう社会人として気を引き締めないと、と反省した。

コンコン。
医務室のドアを叩く音がした。
女医さんが返事をし、ドアを開けると夏木くんが入ってきた。

「どうだ? 大丈夫か?」

「あ、うん。もう大丈夫そう」

「今日はこのまま帰宅しろって望月さんが言ってたから荷物を持ってきたんだ。あ、俺は荷物をまとめてないからな! ただ、みんな明日副社長が帰国するって話でバタバタしてて出払ってるから俺は持ってきただけ」

「明日帰国するの?」

確かにこの前のメッセージでは近々帰国するって書いてあった。
でも明日だなんて……。夏木くんからじゃなく、拓巳くんの口から聞きたかった。
考えるとまた胃がキリキリと痛み出す。

「おい、何だかまだ顔色悪いぞ。送って行くよ」

大丈夫、と言いたいが夏木くんの有無を言わさない表情に頷くしかなかった。
コートにマフラーを巻いたところでバッグを受け取ろうとするが彼が持ってくれるようで手を離さない。
女医さんにお礼を言うと医務室を出た。
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