甘い甘い神様の溺愛は、ときどき怖くて、いじらしい。
「沙汰は言い渡した、下がれ。顔も見ていたくない」
「……かしこまりました、失礼いたします」
親子とは思えない会話を交わし、襖を閉じて自室へ向かう。
沙汰って何様だ、江戸時代かと突っ込む冷静な自分と、予想できる苦難に絶望する自分とで、心はぐちゃぐちゃだった。
そんな時だ。
「──お姉様?」
りん、と鈴が鳴ったかと思った。
そう思うほど愛らしい声が廊下の隅からかけられて、肌が粟立つ。
この声。
怒声も悲鳴も出したことがないような、甘くとろける、澄んだ声。
「やっぱりお姉様だ……! あっ、頬が赤いです。どおしたのですか?」
「……」
顔を上げれば。
薄桃色の、腰まである長い髪を揺らした妹が────心配げな顔でこちらを見ていた。